バッハ作曲・フランス組曲 アルマンド/BWV812
感じることから学ぶ音楽講座・音楽を描く・アナリーゼ
ちっとも舞曲っぽくない舞曲・BWV812フランス組曲のアルマンド
バッハ作曲フランス組曲の第一の組曲の最初の曲は アルマンド。( Französische Suite1 BWV812 allemande)これを描いて解析したくなり、さて、第一曲め、と、思ってひらいて、うーん、と唸ってしまった。
これのどこがアルマンドなんだ?
アルマンドというのは「ドイツ風の」という意味の舞曲。もとはゆるめの2拍子っぽい4拍子というイメージで、同じフランス組曲の他のアルマンドは その通例にそって書かれているように思う。(後にアルマンドはテンポアップして軽快な店舗になるらしい)けれど、これは違う。どうもかなり曲者。そもそも4拍子と捉えるのさえ困難きわまりない。バッハは実際にはフランスの舞踏を見たことがなかった、という話は有名だが、それにしても、あまりにも舞曲っぽくなさすぎる。フランス組曲は平均律やイギリス組曲なんかよりは ずっと馴染みやすく弾きやすいのもあって、折りにふれ、本棚からおろして、弾いてみている曲ではある。でもこの曲者に今まで気がついてなかったってことは、何も感じずに手癖で弾いてたね・・・さて、ややこしい曲なので、そそられる、やってみる。
アウフタクトの後、最初の一小節(上の写真)。一小節の4拍はゆるく下降する2拍と上行する2拍で二分割されているから、この単位で舞曲らしく動いていくのかなとおもいきや、あとの2拍のメロディは次の小節につづき不定形なメロディを形成する。この先も、小節のどこからフレーズがはじまるかのパターンはなく、ふいにタイで伸ばされた音がフレーズになる。全体は概ね3声の対位法で書かれていて、出来上がりのイメージはふわりとゆるい不定形な三つ編みのような感じ、かな。
BWV812のアルマンドの理解の緒として描く
試しに一小節単位で描いてみたが、うまく描けなかった。
というのは私はこれまで、この曲をただただフレーズの流れだけで弾いてたんだな。
頭だけでわかってると思っていても、描いてみると曖昧なものはまんま曖昧になる。
何が原因?・・そか、どうしてもふいにはじまるメロディの方に引っ張られる。
そうすると、次に生まれた別のメロディがガタつく。
そうしてせっかく美しいメロディの幾つかは犠牲になっていた。
例えば、最後の方のここなんかは、左のラの音を拍子の頭として弾くと、その後の内声 上声の流れが今まで自分が弾いてきたのとは全く違う動きになる。それを今まではフレーズのくくりもなく、この下降型の流れ、内声・ソプラノが連動して下降するその感覚だけに従って弾いていた。あとで弾き直してみたほうがうんと互いのメロディが生きる。
こんな感じで洗い出してみるといくつももったいない場所発見。
丁寧にドローイングする。
描いて、また弾く。
一小節どころか、一拍もかなりあやしくて、そんなふうに捉えてみるとこれまでの演奏は拍や拍子という細胞組織が呼吸を忘れているような気がしてきた。これはなんとかしたい。
で、小節ごとの一拍目でなにが起こっているか、をまた洗い出し。
メロディも一つ一つ拍や拍子の流れと 音高の流れをよくきいて丁寧に編み直していく。
そう、こういうのを 心を込める、とか 魂をこめるっていうんだと、最近思うようになった。
そうするうちに見えて(きこえて)きたのは、4拍目から次の1拍目に少し盛り上がって小節線を超える心地よい流れ。
拍や拍子が生きてくると、ポップスなんかでいう、いわゆるグルーブというのが生まれてくる。
これは、クラシックでも同じ。
曲によって、作曲家によって、そのグルーブは変化する。
決して 強弱弱とか、そんな2次元的な動きなんかじゃなく、拍のもつ流れ、拍子の持つながれ。それがリズムや高低の流れを生かしていく。
そやって、練習していくと、不思議と、それぞれのメロディも息づき始める。
さらにメロディとそのグルーブの頂点になる小節線との間柄を丁寧に洗い出し。
そして、弾きあげてみて おもった。
そうか、アルマンド。これがこの曲としてのアルマンドなんだな。
アルマンドの流れにかなり自由にメロディが織りなされている。そこは、バッハ。ラモーではないから。
舞曲にしては凝りすぎてる気がするけど、でも流れ始めると、自然。というかそれなり努力してみた。
改めて、はじめまして。新生私の812のアルマンド。