2024.10.23 utena式楽曲解析

【楽曲解析】つきのひかりに(フランス民謡)

ピアノテキストでよく出てくる、「月のひかりに(フランス民謡)」

この曲はシンプルながら可愛く、美しく、メロディの原型とも言える輝きを持っています。

そんな「つきのひかりに」について調べてみました。

さらに、utena drawingを通して見えてきた驚きの歌とメロディの合致について書いています。

弾いてみた(taninaka)

”つきのひかりに”の歴史と日本での扱い

月のひかりには古いフランスの歌

原曲は18世紀フランスの歌で、フランスでも子どもの歌として親しまれている曲。リュリが作曲したかもしれないということで、もしそれが本当ならルイ14世の時代から存在しているメロディ、ということになります。ルイ14世といえば、太陽王、音楽をこよなく愛した王様の時代で、西洋音楽の歴史でいえばルネッサンス時代になります。真偽の方はわかりませんが、その起源は確かに古そうで、長くフランスでも親しまれてきた曲なのでしょう。

こんなに長い間、そして、日本にまでやってきて自然に地味に根付いているこの曲。

ネットでサクッと調べるだけでたくさんのピアノテキストで使われていることがわかりました。

私が生徒に渡しているテキストは、ヤマハ出版の「オルガンピアノの本」。2冊目の黄色い楽譜に入っていて、右手でメロディ、左でたゆたうような伴奏がついています。

他にも、

ひけるよピアノ(ドレミ出版) 

楽しいポリフォニー1(ヤマハ)

サウンドツリー(カワイ出版)などのピアノ教則本で使われているようです。

逆に、ピアノの本以外でこの曲に出会うことは少ないような気がします。

クラシックの中の「月のひかりに」

この曲がテキストによく使われる背景には、クラシック曲の中にもこのメロディが挿入されていたり、アレンジして使われていることも多いからかもしれません。

wikipediaによると

19世紀フランスの作曲家サン=サーンスは、組曲「動物の謝肉祭」の第12曲「化石」で曲の冒頭を引用しているほか、同じくフランスの作曲家であるクロード・ドビュッシーは、「前奏曲集 第2巻」の第7曲「月の光が降り注ぐテラス」でこの曲を引用している。

ということ。

掘り上げてみるとこの曲、なかなか奥深いです。

wikipediaには歌詞も掲載されています。いかにも世俗曲って感じ。(リンクは下に)

(この曲、日本のテキストでは、二小節めのリズムが伸びるタイプと分割されるタイプに分かれていますが、原曲の歌詞を読んでいると、そこに伸びる母音が入っているので、元は伸びる音だったようです。

ルネ、ではなくルーネ、のような感じで)

この曲に興味を持つようになったきっかけ

utena music fieldでは、utena drawingを「音楽の非言語のやりとり」として共有した仲間、音楽教育に関心のある人たちと「うてな音楽レッスン研究室」をしています。

今の子ども界隈の音楽事情について話し合っていて、わかってきたのは、今の子どもたちには

・暮らしの近いところにあって

・自然に口ずさめる程よい音幅やリズムで

・音楽の原型として美しい

そんな曲に触れることがなかなかない、ということ。

明治時代には「小学校唱歌」という全国の小学校で使われていた曲集があって、それは国の西洋化政策の一環でしたが、志高い人たちによって編纂され、子どもの暮らしや身近な物語に密着したものがたくさんありました。

参加者の一人が話してくれたことで印象に残っているのが

「高齢の方ほど、歌うことが定着していて、若くなるほどに歌がみんなのものでなくなってきている」

という経験から出てきた言葉。

何か、わたしたちに小さいながらできることはないのか、と話しあっているうちに

・今の子どもたちの暮らしに違和感なく

・歌いやすく、馴染みやすい

そんな曲ってないかな、と探していて見つけたのがこの「月のひかりに」でした。

この曲をutena drawingで遊ぶとしたら・・

では、この曲をもっと子どもたちに身近に感じてもらうためにutena drawingをやってみようということになりました。

utena drawingはやっているうちにその曲の良さに気がついてくることも多く、楽しく楽曲分析ができる、という利点があります。そしてよく整っている曲はその流れがutena drawingでさらに滑らかになります。

そんなで、研究室の参加者さんが描いてくれて、

なるほどー、いいねえこれ。となったドローイングがこちら

無理なくリズムオスティナートが形になっていて、それがお月様にちゃんとなっている、という遊び心。

これは使えますねー。

私はこんなのも描いてみました。

構成が見えてくるようなのや、ダンスをするようなオスティナート

さらに、音の上がり下がりを模索していて気がついたのが、メロディの円環運動です。

動画をinstaに上げていますので、ご覧ください。

円環運動、ということは、自然に丸が描けるということで、そう、お月様。

これは偶然でしょうか?いいえ、いい曲というのはそういうことがよくあります。

歌詞の内容とメロディが一致している、ということ。

「でんでんむし」の螺旋運動とか、「たきび」の曲がり角、とか

ポップスの曲でも実はよくこういうことがあるのです。

それは人の心のうんと奥に働きかける動きで、気がつかないうちに人はそこに深さや上質の味わいを感じているもので、その曲が愛される所以だったりします。utena drawingでは意図することなくそういうメロディの側面に出会うことがあります。

まとめ

フランス民謡で、ピアノテキストにも多く使われている「つきのひかりに」は、紐解いてみるとなかなか奥深い曲でした。

私はオルガンピアノの本で馴染んでいて、その歌詞と伴奏のイメージからゆったりした曲、と思っていたけれど、歌詞を読んでみると、原曲は案外リズミカルなのかもと思いました。

背景や楽曲の仕組みが見えてくると、こんな小さな歌ですが、愛着が湧いてきますね。

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note ・音楽前夜(谷中みか)
今の子ども界隈の歌事情

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参考図書

日本の唱歌1(講談社文庫・金田春彦等編)

音楽の根源にあるもの(小泉文雄)

外部の参考記事

wikipedia/月のひかりに

Au ciair de la Lune(youtube)

長文読んでいただきありがとうございました!


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