2022.10.17 utena.m.fのテキスト

おとえほん

おとのうごきと音符の動きから学ぶ音楽テキスト・おとえほん

音楽プロセスと体験プロセスにそったピアノテキスト

レッスンバックにいれるのももどかしいというように、おとえほんを小脇にかかえて生徒が音楽室にやってきます。この本を愛着をもって、大事にしてくれているのを見ると私も嬉しくなります。そして、音楽室にはいるなり、ピアノの譜面台にこのおとえほんを立てて、おもむろに弾きはじめるので、私はよい聞き手にまわります。


utena music field の音楽プロセス体験、音楽する人の実感を大事にはじめ育てていくにはどうしたらよいか、ということをいつも考えています。

いかに、その人が音の動きを「わがこと」として感じ、音にあらわしていくか・・
幼児期に音楽レッスンを始めた子どもたちは、わらべうたやてあそびうた、utena drawingをとおして音楽とよく親しんでから、やっとピアノのテキストを渡してもらいます。しかも、最初のテキストは、これ、「おとえおほん。」チョコレートの箱くらいの大きさ。
いまのところ、出版の方法が見つからないので、一つ一つ手作りしています。

中はこんな感じ

ひとひらのメロディの断片でできた1ページ

子どもたちがつかいこんでくると、こうなります。
以前は、私が製本していましたが、接着がとれてしまうので、最近はリング止めにしています。

おとえほんについて

おとえほんには絵がない? 音もない?
いえいえ、おとえほんは、音符が絵だし、音符が音楽です。

年長さんから小学校2年生くらいを対象としています。
小さな絵本のようになっているのは、幼い子どもの注意力に配慮していることと、子どもたちが手に取りやすく、愛着を感じてもらえたらいいなあという思いからです。
子どもたちは繰り返しが大好き。
同じ絵本を何度も読んでほしがりますよね。
同じように、おとえほんも「まるをつけておわり」ではなく、何度も繰り返し読み返してほしいなあとおもっています。

また、もっと大きい子たち(ときには大人も)もう一度「きく」ことの基本から学んでほしいというばあい、この本は有効であるはずです。

必要最小限の情報と、ピアノ演奏を学ぶ上での必須アイテム

おとえほんは、ト音記号のドレミとヘ音記号のドシラまでの音だけでできてきます。
最後まで行っても6こです。

音価も黒い音符と白い音符おやすみ。それだけわかっていれば読むことができます。

少ない音符で確実に楽譜の特徴を捉え、音楽の流れに沿って、 読みつつ引きつつ耳をすませて自分の音を聞く、と言う、音楽本来のあり方に沿ってスタートを切るためのテキストです。

そのために、必要最小限の情報と、動きだけを取り出してみました。

二つの音から始まる

音楽は音符の点にあるのではなく、音から音への移行によって生まれる、というのがutena music field の考え方です。 おとえほんはそれに従って生まれました。

だから、ドという点から始まるのではなく、二つの音から始まるのです。 レとド二つの音との間の動きの中にある音楽を感じることから始まります。ここには決定的な体験の違いがあります。

また、ここには、1の指が支配的であることによって生まれる弊害から逃れるため、最初から1の指だけを使わない、と言う配慮でもあります。 レとドを使うことによって、手の甲を有効に使うことを最初から学ぶのです。

多相的な感覚と、統合する能力

本来、ピアノ演奏は・・・いえ、ピアノ演奏にかかわらず音楽を奏でると言う事は、 様々な感覚を同時に多相的に使いつつ、それらが1つの統合された動きとしてあらわれます。 おとえほんが目指しているのは、まなびはじめの段階だからこそ、そうした統合的な感覚を身に付けることです。それは、知識である以前に体験として心と体に残っていきます。

おとえほんを生徒とつかってみる

指導のポイント1 繰り返すこと

理屈で教え込むのではなく、何度も繰り返すことによって体験を補強し、それによって音楽フィールドを構築し、身につけていく、と考えてください。従って、このテキストは丸をつけて次、という発想ではなく、何度も楽しむつもりで、一度でうまくいかなくてもかわいい花丸をつけてあげてあげます。そして、楽譜の周りが花丸でいっぱいになるように。子どもは繰り返すことが本来大好きです。同じところで同じようにおどろいたり、笑ったりしながら、このテキストを子どもと一緒に読んでみてください。ユーモアを忘れないで。最終的には音の上がり下がりの感覚と鍵盤との関連、フレーズの美しさ、ごく基本的なリズム、連続する・伸ばす・音のない空間、になじんで演奏できるようになれば卒業。

指導のポイント2 ピアノとのふれあい

押すと鳴る。
子供にとってはピアノに触れることは未知の体験です。余分な力が入らないことを理解してもらいましょう。レの音、つまり2の指から練習を始めます。指よりも手の内側を大切に。とはいえ、いきなり指導にはいらないこと、徐々にわかればよいのです。体験として、伝わるのも根気良く待ってみましょう。

指を離すと音は途切れる
力を入れなくても手をそっと話すことで音が切れることに気がついてもらいましょう。音が切れるまでは共感して音の中にいて、途切れる瞬間を捉えられるようになるまで気を配りましょう。(これはおとえほんからはなれてやってみるとよいですね。)

楽譜を見て弾く
どんな音が出ているかは耳でとらえる、指遣いは感覚で覚える、当然のこととなるように。
目に依存しすぎないためにも目は鍵盤から離しておくように、そのためにおとえほんをみながら、まるでおとえほんから音がなりだしているような体験にもっていくことができれば上出来です。

指導のポイント3 どこまで突き詰めるか

楽譜を音楽的にとらえること、 楽器の特性に気がつくこと、は、このテキストにおいて、十分に学習できるようにします。 でも子供の成長における指の状態は千差万別です。幼い子どもの指はまだとても弱くて弾けそうもないと言う場合もあります。。

弾けない原因をまずよく見極めて、それが身体的なものであるなら、あまり無理をさせず、時期を待つのも1つかと思います。成長して、音楽の捉え方がもっと理解できたときには、テクニックは自分なりに身に付いてくるでしょう。

おとえほんが示す先に

おとえほんは音楽の「種」

じぶんでおとえほんを譜面台に立てて弾き始めていた幼児さん。この習慣は、大きくなっても続いていくようです。

おとえほんになかには、音楽の基本的な体感が編み込まれています。
植物の種の中に、小さいながらもうその植物の情報が揃っているように・・
これは音楽を始める人にとって「音楽フィールド」の構築の一番最初の大事な体験です。

音楽をきく、演奏するピアノを弾くための、基本的な体験、「音の高低で感じる。連続して鳴らす、のばす、空間を感じる。」がすでに体感できていますから、本格的に楽譜に向き合った時もそれを応用して理解し、演奏していくように促していきやすいだけでなく、子どもたちも、実感から音楽を捉えていくので、自分ごととして、音楽に親しんでいくことができているようにおもいます。

自分で楽譜を書いてくる生徒も

私のつくった小さな絵本が手本になるのでしょうか・・
自分で曲を作ってやってくる生徒も結構います。

どんぐりぐりぐり
ぶきみなやしき
わたりどり

音楽の時間的・空間的把握

おとえほんで音楽とその記譜法に触れた生徒たちの特徴として、音楽を時間的・空間的に把握している、ということをよく感じます。伸ばす感覚や、休符の余白、音を時間的な動きを心地よく感じながら演奏するので、のちに楽譜からメロディを起こしてくることをめんどくさがらないで楽しんでいる様子があり、このえほんをつくってよかったなとおもいますし、今は他のテキストで始めるということは考えられません。

utena music field の音楽プロセス体験とutena drawingについてはこちら



ワークショップ随時開催しています。


utena drawingをとおして音楽を学んでみませんか?
utena drawingを音楽教室に生かしてみませんか?