2018.09.01 utenaの思考

音の細い生徒へのアプローチ

ピアノ教室に毎週通っている生徒で、とても線の細い子がいる。

体も華奢だし、指も細くて、ピアノの音もずいぶんと小さい。

少し筋肉が付けばいいかなと思って、ハノンをやってみたりしたけど、本人がハノンと相性が良さそうには見えなくて、いやいややっているし、一向に効果らしいものも見えてこない。華奢すぎて途切れがちな音をなんとかしてあげたかった。

でもなんか、違うなあ。

もしかしたら、「もうちょっとしっかりした音」で弾くことを求めるのは間違ってるんじゃないか、と思い始めた。もうちょっとしっかりした音で自分の耳にもよく聞こえてきたら、途切れがちな音楽の線もつながってくる、と思っていたけれど・・・

で、試しに、小さな音のまま、テクニックのことも何も言わないまま、私が、その小さな音に寄り添っていくことの方を大事にしてみた。

そしたら、なんとなく、その生徒の見えている音景色がわかってきた。そうか。
その生徒は、別に大きな音で弾きたくなんかない。
ちゃんと聞こえてる。

じゃあ、どうやってその音で、音楽として整えていけるか、だ。

音楽を描く方法も使いながら、流れを掴む練習をしたり、グループワークでは他の生徒とリズムを共有したり、ということをやってみた。グループワークのときも、決まったテンポではなくて、そこに生まれてくるテンポを大切にしながら音楽として流れていける方向を示すような指導にした。

そうしたら、小さな音のまま、音楽がちゃんと流れ始めた。

むしろその小さな音でちゃんと流れる、って子供にしてみたら、コントロールが大変なんじゃないかと思うけれども、この子の音世界はこれで均衡が保たれてるから、大丈夫らしい。
音楽としてのながれがつかめてきたら、そのうち表現の幅は広がってくるだろう。
レッスンにきてもリラックスして話しかけてくるようになった。

レッスン自体も楽しくなってきたみたい。良かった。

私は、自分がこうしなければ、と考えていたことを手放せてよかった。


写真。なぜか、玄関のワンコにわんわん言われるので、ここから入ってくる。