描く’を表す別の言葉は?

描く’という日本語を別の言葉に置き換えるとすると、スケッチ・ドローイング・ドゥードル・デッサン・スクイグル・・といろいろありそうです。いったいそれぞれが示すものはどんなものか、私なりに整理してみる必要ができました。

ここの音楽室、utenaでは、音楽の要素を描いて実感を育てる、という方法を使っています。

大事なのは、描いていく時の体験で、出来上がった絵のほうではないので、”音楽を描く”という講座名をつかってきました。描く・・・動詞ですね。でも、この講座名、使いづらかったり、誤解もあったり、だったので、それに変わる良い単語はないものか、と、いろいろ調べて、出てきたのが、これら、スケッチ・ドローイング・ドゥードル・デッサン・スクイグルという言葉でした。これらの違いを自分なりに比較・整理して、この「音楽を描く」が示すものとの関連を考えてみたいと思います。

スケッチ(sketch)とドローイング(drawing)の違い

sketch,drawing,dessinはそれぞれ「ちゃんとした絵画」やできあがったもの、に対して、しゃかしゃかと描かれた線や設計図のことをいうイメージがあるから、いわばお仲間のようです。音楽を描く’というワークも、「ちゃんとした絵」を仕上げるものではないので、これらに近いものを感じます。まずはネットの検索しながら、このへんから探ってみます。

sketch

スケッチ、写生(図)、下絵、素描、見取り図、略図、(事件などの)概要、概略、(人物などの)素描、点描

webilo英和辞典より

なるほど、これはできた絵の方のようです。sketchは動詞としても使うので、動詞として調べると

要点または、概要をざっと簡潔に記述する、または、要点または要約を与える、、

ということになるそうです。このsketchに含まれる、要点や概要の輪郭をざっくり掴む、みたいなところは、音楽の構成を掴むときや、オスティナートといって、同じ動線の繰り返しを描くものなど近いかもしれません。部分的には、スケッチ、があっているかもしれないと思います。また、スケッチという言い方は日本人に馴染みもいいですね。ドローイングってっちょっと大仰に聞こえなくもない・・・ということで、次はドローイング

ドローイング drawing

(図案・絵画の)線描、製図、(鉛筆・ペン・木炭などで描いた)図画、デッサン、素描、くじ引き、抽選会、hold a drawing 抽選会を催す、(小切手・手形の)振り出し

webilo英和辞典より

ドローイングは基本的に線、なんですね。抽選会?
さらに、drawという動詞を紐解いてみると・・

draw

(軽くなめらかに)引く、引っぱる、牽引(けんいん)する、(ある方向に)引き寄せる、引きしぼる、引き締める、(通例「締める」の意で)(続けて)引く、引っぱって下ろす、(無理に)(…に)引き入れる、引いて馬を止める

webilo英和辞典より

ありました。引く・・・ここに人の仕草が。時間的プロセスも含まれますね。
スケッチは要約、ドローイングは線を引く行為、と言えそうです。

デッサン

そして、なんとなくちょっと違いそうな気がしますが、デッサンも調べてみました。デッサン(dessin)はフランス語です。drawingと同じ、と書いているものもあります。

デッサン(dessin)

絵画用語。素描とも訳される。一般に線的特質が顕著で,ほとんど彩色を施さない絵画表現をさす。その目的により次のように分類される。 (1) 印象の把握,細部の記録,絵画・彫刻・建築作品の計画,着想の発展などのためのスケッチ,クロッキー。 (2) ムーブマン,肉づけ,明暗法,解剖学などの絵画表現の探求,技術的習熟を目的としたもの,および完成作の細部,全体の構図を明確にするための習作。 (3) 壁画,タペストリーなどの原寸大の下描き (→カルトン , シノピア ) 。 (4) 独立した完成作としてのデッサン。またそのメディアとしては次のようなものがある。 (a) 墨,ビスタ,セピアによるペン画。 (b) 筆による線描,および淡彩。 (c) シルバー・ポイント,ゴールド・ポイント,リード・ポイントなどのメタル・ポイント。 (d) 鉛筆。 (e) クレヨン,チョーク,パステル,木炭など。先史岩壁画もその性格からみてデッサンといえるが,一般に絵画史のうえではルネサンス以後特に発展した。多くの画家が絵画表現の探求のために行なったが,それ自体で完成した一個の芸術作品としてのデッサンも制作されるようになった。

コトバンク・ブリタニカ百科事典より

デッサンは絵画用語としての意味合いが大きく、気軽に使えそうにありません。
調べていると、デッサンの意味がスケッチだったりドローイングだったり、それぞれリンクしあっている感じで、使うときもそんなに厳密に考えなくて良さそうです。

スクイグル(squiggle)とドゥードル(doodle)

そして、この2つの言葉も「音楽を描く」を伝えるのに外せないものなので紹介しておきます。

スクイグル・芸術療法での「描く」

スクイグルという言葉、私はずっと落書き、という意味だと思っていましたが、芸術療法での手法の名前でした。非言語で、意味のない線をやりとりするものです。私自身も芸術療法をまなんでいる中で絵画療法の一つとして出会いました。私はレクリエーションとしてワークの導入場面でよく使うのと同じ感じですね。あとうっかり子どもを泣かせてしまったときもじわじわ、線でお話したりします。

実際には、場面緘黙症の子どもとやり取りをするのに活用したりもできるのでとても奥深いものでもあります。非言語のコミュニケーションツールで、音楽を描いてやりとりする、という発想にすくなからず影響を与えてくれた方法です。

スクイグル(squiggle)

ドナルド・ウィニコットが提唱した非言語的な表現方法を用いる芸術療法の1つに、スクイグル法 (squiggle) があります。これは、画用紙にサインペン等でなぐり描きをすることを指示し、2人が相互になぐり描きをして見えたものを絵にする方法です。

芸術による教育の会による 芸術による教育のための どこでもアートなブログ
からお借りしてきました。

ドゥードル(doodle)

ドゥードルは、ワークがうんと進んでからであった言葉です。これが「落書き」に近い言葉ですね。子どもが自然にクレヨンをもってなぐり書きするのも、doodleです。しらべたら、こんな感じ出てできました。あらら。

doodle

(考えごとをしながら)いたずら書きをする

あらら、これだと授業中のいたずら書きしか思い出せない。(しょっちゅうやっていました。)

ドゥードルはこの本「描きながら考える力」を読んで知りました。これは発想的にとても「音楽を描く」ことに近いと思いましたし、ここからヒントを得たワークも取り入れています。らくがきしたくなる本!

で、「音楽を描く」はutena drawing に。

それぞれの言葉の性格がなんとなくわかったところで、「音楽を描く」はどこへ行き着いたか。

主には、ドローイングかスケッチ、部分的にはそれぞれあり、な感じがします。
けれど、全体として使うとしたら、どうもdrawingじゃないかな、ということになりました。

わかりやすさを優先して日本人には気軽さもイメージするスケッチという言葉を拝借して、音楽スケッチ、と言われることもあったのですが、逆にそれ故、ちょっと考え直しました。この音楽を描くという方法は、ラフさがありながら結構厳密に時間や空間のリアリティを引き出してくる緻密な部分があるから、馴染みが良いからと言ってスケッチで通してしまうのは、どこか性質のズレみないなものがあり、人にもこの方法が うまく伝わっていかないんじゃないかとも思うようになったからです。

だから、結論としては、
部分的にはそれぞれありだけれども、
この方法の本質的なものや、全体を示すときには 統一してドローイングを使う、ということにします。

加えておくべきことがもう一つあって、音楽ドローイング、と言ってもいいのだけれど、そうしたとき、理論がついていかないまま、霧散していくことを避けるために、utenaの名前を頭につけておくことにしました。

utena drawing が、「音楽を描く」の本名称として、生まれた、というわけです。

調べてみて面白かったのは、同じ「描く」という行為でも、sketchと drawingの 焦点のあたっている場所のちがい、でした。

それは、取りも直さず、utenaの「音楽を描く」に初めて出会った人の体験の変化にも対応しているように思えます。
最初は、音楽の略図として捉えていたものが、深まるに連れて、それだけではないんだなって気がついていくこと・・・音楽や自分自身の感覚からなにかを「引き出してくる」ことだと気づいていく過程に似ているとも思えたことでした。それは、私がこの方法で講座を始めたときから伝える困難さに壁を感じていた、それの違い、それによく似てた、ってこと。

それにしても、言葉っていうのはひとつひとつ生きものですね。
言葉っていうのは、使う人の精度によってその息づき方も変わってくる。
結局どっちも場面によってはありだし、使う人の体験によっても違うってことなんだけれど、調べてみてよかったなと思いました。