中学生 ドビュッシーの「夢」を練習

テンポ早くミスりがち

中学生の生徒、豊かに表現したい思いもあるし、熱量もある。技術も備わっている、ただ、わりとあちこちへ突っ込んでいって予期せぬミスをしがち、しがち、というか、結構つっかえてしまうタイプです。

さて、このとき練習していたのは、ドビュッシーの夢でした。
utena drawing を行う場合、描く人の今の実感がどうか、ということと、その楽曲がどんなつくりになっているか、ということの両面をよく吟味する必要があります。

ドビュッシーの「夢」はこんな曲

ということで・・・まずはドビュッシー「夢」の性質をよく観察してみます。

この曲は、たゆたうような左のアルペッジオが全体の空気感を支えています。そして、このアルペジオが難しくコントロールを失ってしまうようです。

このアルペッジオの難しさは幅の広さがあると思います。

この「たゆたう」ということと「幅の広さ」は別物ではありません。

でも、練習していると「たゆたう」は表現、 「幅の広さ」はテクニックというふうにとらえて、とにかくミスタッチのないように指を届かせる幅の広さだけの練習になってしまいがち。

中学生の生徒もそうでした。

ここにもう一つの要素「微細にかわるハーモニー」も一緒にとらえることで、ミスタッチ=「幅の広さ」という囚われから離れ、もっと全体を捉えていくこと、立体的にきくことに変わっていくことができないか、と考えました。

結局そのほうが、近道だからです。

ミスと向き合うために、utena drawing

そのへんまで予想をつけて、utena drawing をやってみることにしました。というか、こんなふうにわかっているけれどもなにか足りないというときこそ、utena drawing 。

Debussy 【Rêverie】

赤で描いている線は最初、ゆっくりとしたテンポを捉えるのに、大きな波を描こうとしたもの。でも、この赤の線の大きさでは、テンポだけしか捉えられないことに気付きました。

この生徒はどちらかと言うとテンポを自分の理解より速く捉えてしまいがちだから、むしろ、ちいさく描くこと極端にゆっくり描くというストレスを与えることによって、集中を増し、音と音の幅を動きながら意識的に捉えられるよう 工夫しました。これはオスティナートスケッチに分類できます。

これはとても効果的でした。

上の写真がそれ。どうしてこの形になったのか、という根拠はあるけれども、これがこの曲の正解というわけではもちろんありません。utena drawing は、その時時で聞き方を促す働きをしてくれます。

この練習と合わせて、楽譜の右・左の両方を縦に眺めていき、ハーモニーを抽出した練習をしていきました。

私は、「ミスタッチに気をつけなさい」なんて先生にそう言われると、かえって固くなってしまう生徒でした。だから、できるだけ、そうじゃない、もっと音楽に近いところで対話できる方法を、と思うのです。

インプットのあとアウトプット

そして、このあとの中学生の演奏は・・

注意深く聴くことができ、自分が理解できる速度や、楽曲ならではの速度を獲得することができました。

そのことによって、ミスタッチを起こしている自分の動作に気づいて来ます。

ミスタッチは別の気付きをもたらせてくれる鍵のようなものですね。

むやみに取り除いて解決、ということでもないですね。むしろミスを生かして、この曲とさらに仲良くなれるのかもしれません。