2024.08.22 u.dの活用例

ベートーヴェンソナタ悲壮の3楽章・長い音符を的確に捉えるためのutena drawing

悲壮ソナタ3楽章のゆっくりになるところが難しい

ベートーヴェンの悲壮ソナタの3楽章の44小節目〜。

(Beethoven Klaviersonaten NO.8 Opus13-3)

この場所は、それまであった左手の伴奏や全体が拍を刻んで動いてきたのがが消えて、和声が中心となり、両手でハーモニーを両手そろったリズムで掴んでいくことになります。

もし、こういうところが苦手で、それまで道があったのに、いきなり無重力空間に移動させられた感じがするとしたら、それは、拍感、拍子感が育っていない、という状態です。

ここはそれが露呈してしまいやすい場所なのです。特に45小節目の付点二分音符。

ベートーヴェンピアノソナタ「悲壮」の3楽章44小節目から。
長い音符を的確に捉えるには?

そこで何が起こっているのか(音楽的に、体験的に)、そして、それを対処療法的ではなく、根本的に体感を変えて音楽的に捉えていくには・・・ということを書いています。

なので、この曲に限らず、白い音符がうまく捉えられない、という人にもぜひ読んでいただきたい記事です。

ここ、utena music fieldは、”音楽の生まれる場所”にいつも興味があり、人が音楽を産み育てる体感と理解について研究をしてきました。その観点からの記事となっています。

音楽室の音楽に対する考え方について興味のある方はこちらをご覧ください。

白い音符が詰まり気味になる

白い音符が苦手、という人が、実は案外多いのではないかなと思っています。

白い音符というのは、二分音符や付点二分音符、全音符などの、四分音符(一拍)より大きな単位の音符です。一拍を分割するのはできるんだけど、伸ばすのが難しい。

問題の、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲壮」の3楽章の45小節目。

これは、大人のピアノレッスン生の持ってきてくれた一例です。

書いてある音価は付点二分音符、つまり3拍で、これを伸ばして4拍目で同音が入るのですが、どうしても詰まり気味になってしまいます。

さて、ここで何が起こっていて、どうしたら的確で心地よい付点二分音符を捉えて、ここの穏やかなメロディの雰囲気に持っていくことができるでしょうか。

この例を紐解きながら、ありがちな白い音符がうまく掴めない、伸び切らない、というときの原因と対処の方法を書いて行ってみようと思います。

つまづきの原因

ここの難しさ

ベートーヴェンの悲壮ソナタの3楽章のこの場所は、それまであった左手の伴奏や全体が拍を刻んで動いてきたのがが消えて、両手でハーモニーを同じリズムで掴んでいくことになります。

拍感や拍子感がまだ内的に育っていない場合、伴奏の支えがなくなって、迷います。

それまで道があったのに、いきなり無重力空間に移動させられた感じがするとしたら、それが、拍感、拍子感が育っていない、という状態です。

これに関しては後で取り組み方を説明したいと思います。

そもそも白い音符の判別がつかない

付点二分音符(悲壮ソナタ3楽章45小節目)

白い音符、というザクっとした括りでリズムを読んでいるので、楽譜の中で出会っても、付点が目に入っていない、とか、とりあえずよくわからないから、適当に伸ばしてみる、とか。そういう習慣で楽譜を読んでいるパターン。ここはもう一度、おさらいしておきましょう。ちょっとした心掛け。

白い音符の種類と長さ

まず落ち着いて、楽譜を眺めてみましょう。

ここでは、付点二分音符なので、3拍伸ばしてから着地ですね。

白い音符で流れ(意識)が止まってしまう

また、白い音符が出てくると、意識がそこに止まってしまうので、カウントができない、というパターン。

3拍というのはわかっているけれども、体感そのものが立ち止まってしまっている。白い音符の打点(音が鳴った瞬間)に、そこに時間が流れなくなってしまう状態。

ということは、白い音符で意識が止まったりせずにそれまでの流れを継続して動かしていく必要があるということです。

本来、伸びる音というのは、どんな曲でも、その長さがほんの少しでも、心地良さがあるものです。

そして、音のイメージは、放物線を描いて、ちょうど次の音に届くほど良さで着地できたらいい。

ところが、これが、コツを掴むまでは、ちょっと怖かったりしますね。

どこか変なところへ落ちて、怪我をするとか、そんなはずはないのですが、でも、おっかなくて、そそくさと済ませてしまう。ちょっと冒険心も必要ですね。

対策

今までの様子から理解しておきたいのは、

・この曲のこの場所故のリズムの取りにくさ

・音符の長さを理解しておく

・音を鳴らした時に意識が飛んでしまうことに気が付く

ということで、

この場所だけをなんとか頑張りで直す、というのでない方法をやってみます。

ここで、問題になっているのは、実はリズム、ではなくて、拍感、拍子感なのです。

拍感を養うことで、音楽の中で迷子になったりしなくなりますし、怖くなったり、ちょっとパニックになったり、ということもなくなります。

ここは、付点二分音符、拍を描きこむとこうですね。

悲壮ソナタ3楽章の45小節目のリズムに拍を掻き入れる

これはうちの音楽室で使っている拍の描き込みの方法 (詳しくはこちら リテラシーワークブック)

このレッスン生と、こんなことをやってみました。

私が、少し前からピアノを弾いて、それに合わせてこんなふうにコブを描いてもらいます。

同じ作業の繰り返しなので、リラックスして、手はラフに、耳で音を感じながらやってもらうわけです。

そうすると、いろんなことが見えてくる。

例えば自分がどこかで止まってしまうことに気が付くとか、

付点二分音符が伸び切らないで、拍が取れなくなってしまうとか。

自分で気がついてくるし、

私もそれが見えるので、ピンポイントでその場所を伝え、動きを共有していくことができます。

utena drawing。拍感を育てるために

とっても単純な形なのですが、拍感を育てるのに、これはとても良い方法。

これは音楽の案内人(一般的にいう先生)がそばにいて、道案内があると心丈夫なのですが、もしかしたら、一人でやってみても効果があるかもしれませんので、試しにやってみてはいかがでしょうか。

ということで、大人のレッスン生の方とも一緒にやってみて、この時のレッスンでは、きちんと3拍分の長さが確保できてきたようです。心地良さはどうだったでしょうか。

次回もし、まだ迷いがあるならもう一回、一回と言わず、何度もやってみて、他の曲でもやってみて、どんどん拍の体感を身につけてもらって、迷子から解放されて、自信に繋げて行ったもらったらと思っています。

さらにもう一つ大きな括り、拍子感も身についてくれば、表現がもっとしやすくなります。

まとめ

ベートーヴェンの悲壮の3楽章の45小節目の付点二分音符の部分は、体感が掴みにくく、案外躓きやすいところです。

ですが、こういうところで、立ち止まって、その根本的なところから自分を育ててみることができます。

ここは、拍感を養うには絶好の場所なのです。

対処療法的ではなく、この場所をきっかけに自分の音楽的領域をそだてていけることを期待しています。

*音楽教室などでutena drawingのご活用をお考えの方は、必ずこちらをお読みください。
音楽を描く utena drawingの商用利用について〉


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