拍を実感するってどういうことだろう?
utenaの音楽レッスンで活躍している2つの拍のワーク
ちょっと変わったリズムが曲の中に入ってくると手拍子が狂う、という事があるでしょう?
それは、リズム感がない、というよりは「拍の実感」が薄いからなのです。
今回は、子どもたちとやっている拍を体感するワークをご紹介しながら、拍を実感するってどういうことか、ということを実際に描きながら一緒に考えていきたいと思います。
1つ目は、子どもたちが大好きな虹のスケッチ。
小学校2年生くらいを対象にすると、楽しくとりくめるワークです。
それから、メリーさんのひつじのワーク。これはもっと幼い幼児さんが好んで繰り返し描くutena drawing です。これは実際には二拍でひとやまなのですが、体験的には拍と同じと考えています。
これらのワークは、無理のない自然な拍子感、拍節感を身につけるのに重要な役割を果たしています。
これをしっかりとやっておくと、少し大きくなってピアノを始めたときに、拍の感じが内面で動的に理解できているので、負担なく拍にのる(リズムにのる、ということですね)ことができます。
今回はこれを拍がわかるってどういうことなのか、ということから紐解いていこうと思います。
描きながら読んでいただくと、より、わかりやすくなると思います。
さあ、そのへんの筆記具と紙を用意してみてください。
拍を実感するふたつのワーク
山を描く
まずは、4拍子の音楽に合わせて、やまを4つ描きます。
1234で右に 次の1234(5678)で左へ、を繰り返します。
山の右端が拍の到達点(と名づけます)です。数字を打っているところです。
最初「拍の頭」と書いてみたのですが、しっくりこない。
それは、生徒も私もこの山一つそのものが拍、という感覚を持っているからなのですね。
ここが面白い発見、なのです。詳しく見ていきましょう。
この動きは、まりつきによく似ています。
まりつきは、トンと落とす前に動作を始めていなければ、床にタイミングよく落とせませんね。
力加減も大事です。
実際、これがうまく描けるようになる前に、まりつきで練習したりもします。
全体を美しく描けるようになるためにはこの山が整っていることが大事で、生徒たちはみな、今度はもっと綺麗に描こう、と、私が特別指示しなくても、音楽をよく聞くようになります。
何度もえがいているうち、山のアーチそのものを1と感じるようになってきます。
そのほうがうまく音楽と出会える気がするのです。
早すぎてしまう子、遅れてしまう子、それぞれに対話と自分自身の微調整によって、
あってくるようになります。
さて、このワークが1年生後半くらいからなのですが、そのまえにたくさん、拍のためのスケッチをします。
メリーさんのひつじ
下のがその一つ。メリーさんの羊 です。最初の歌詞が入る場所を書き込んでいます。
描き始めは、メの一つ前の山からです。
幼児さんは、たくさん描くのですが、やっているうちに、のりのりでこんなふうになるときもあります。
音楽とうまくあっていれば、好きにどんどん描いてもらいます。
(ただし年長さん以上。余談になりますが、あまり小さい子には 交差する、
という難しいことは(少なくとも意識的には)できないものです。
でも年中くらいでもやってる子、いますね。交差という感覚ではないのでしょう。
やってみてください。どんなかんじなんでしょうねえ。子どもたちが夢中で描いてるのは。
描いているのは山ではなく、螺旋ですね。
そしてこれが、見ていても楽しげで、ふんわりと音楽に浸っていて、とても良いのです。
でも、こうなると、一体どこが拍の到達点になるのか・・・という疑問が湧いてきました。
そもそも、拍を点、と捉えることは、どうなのでしょう。
拍は動的で点ではない、ということ。
多くの子供用音楽テキストで、よく手を叩かせてリズムや拍子をとらせますが、それが知的には理解できても、拍と拍の間を等間隔に捉えることはいつまでもできなかったりします。
体験的には、なにもないところにいきなり拍の点が現れる感じです。リズム感がない、という人も同じような感じです。
この方法だと、できる子はすぐできますが、できない子はいつまでも受け身です。
これは「手を叩く」という動作だけでは、見えてこない、拍と拍の間をその子がどう生きているか、ということに関わっていて、これらのスケッチを通して、それが見え、指導者の目をとおして、あるいは本人の意識の変化によって、自然に拍と拍の間をいきいきと捉えられるようになるのではないか、とおもうのですね。描くことで体感が変わってきます。
話を戻しましょう。上の図。
虹のスケッチでの拍の捉え方は①のようなチカラの方向性を持っています。
この場合、全体を支えるアーチのような力が働いています。
山全体が安定したエネルギーを持っています。
螺旋を描いている子はちょっと違っていて、のように放物線を描くために、最初の上にあがるところに一番エネルギーを使っています。
どちらが、正しいか・・・・・
というのは、問い自体がも違っている、と、気がついたのです。
因みに 手を叩くように描いて見たのが③
これは、エネルギーのつながりが見えない。
多くの生徒さんは、こんなふうに叩いてしまいます。
もちろん間のつながりがよく分かる叩き方のできる子もいますが。
こうやって観察していくうちに、ますます、拍、というのは点ではない、と、考えるようになってきました。
いえ、曲によって、拍のもつ個性というのがあって、虹のスケッチはそれ以前の白紙の拍とでもいうか、
一番シンプルなところの拍を身につけていくのかもしれません。
ここが、肝心なところ。utena drawing の基礎になるところです。
1という拍の概念と、実感的な推進力としての拍感
人はそれぞれに違った身体の方向性や力を持っていて、
なおかつ環境の違いにより、みんなそれぞれ違う癖を持っています。
拍を1、と捉えるフェーズと、実感的な推進力として拍感というのがあって、ループで動いていく拍はより音楽と自分との距離感が近いとも言えます。そして、その感じ方となると、人それぞれ微細に違っていたりします。
私はこれを「矯正」することはできない、と考えています。
また、その個性は将来、その人の音楽そのものを担っていく基盤にもなるものですから、
「矯正」して別物を植え付けるのはそれを殺してしまうようなことです。
でも、白紙の拍(1という概念)と、躍動感を生み出す拍を行き来する中で、自分の気付きとして微細な修正をしていくことや、コントロールしていくことはできます。
最初の白紙の拍といえる線や、ループになっていく線を体験していくことで子どもたちは、
基礎力をつけ、曲独自、或いはその人独自の拍子感覚をコントロールする力に変えていくのです。
実際子どもたちの変化には眼を見張るものがあります。
日本人にありがちなことなのですが、最後の拍をきつく叩いてしまう、というようなこと(これで音楽との二人三脚ができずつんのめってしまいます。)も、矯正しなくても自然な拍節感覚の中で自然なものになっていきます。
こんなふうに、utena drawing は、たくさんの情報を読み取ることができるので、いろんな気づきにつながっていきます。
さて、今回は拍に焦点をしぼってお話しましたが、虹のスケッチはこの一拍を柱としながら、ここから2拍伸ばす音、3拍、4拍(1小節)との組み合わせによって、拍子の入れ子の感覚を掴んでいくことになります。さらに、応用力を伸ばしていくことになります。
utena music field では、ワークショップやサークルなどを通して、utena drawing を広く皆さんに知っていただくお仕事をしています。、、ということでインフォーメーションです。
拍を実感するためには
拍をしっかり実感することで音楽の流れに乗って進んでいく船ができます。
拍は点ではなく、動的でありながら、1という概念なので、一度点に突き当たって跳ね返る、その点がその区切れ目のエッジ(縁)になるわけです。そして点から点への跳ね返りや落下があり、これを感じられるようになることで、音楽の動脈と一体になり、その生命に近づいていけるようになります。
これは点を手で叩いていても、メトロノームで誘導しても、頭でわかっていることでもなかなか、実感にはつながっていきません。ですから、utena music field では拍を描き出してみます。そうすることで自分がどんなふうに拍を感じているか、が見えてきます。ぜひ、体験してみてください。