2021.12.27 utenaの思考

わらべうたを音楽教室にとりいれる、ということ

音楽的エッセンスを伝えるわらべうたを

当音楽教室では小さい子どもさんのレッスンにわらべうたをとり入れています。
でも、「なんかいい気がする」だけでは、音楽教育の根幹に据える意味がよくわからなし、うまく活用もできません。

わらべうたはその多くが子どもの感覚的、音楽プロセス的、情緒的に働きかける、とても優れた力を持っています。
けれども、それを音楽レッスンとして活用するには、それを眺めているだけではダメで、それをうまくひきだしてくる工夫や観察がもちろん必要になってきます。そしてそれこそが「音楽的」なエッセンスともなるのです。

おとあそび

わらべうたを音楽教室でのレッスンに取り入れるには、遊びの中でも音楽を豊かに表現し、西洋の数理的で思考的で感情に訴える、あの音楽への道づけが必要となります。

そこで、わらべうたの中でも、感覚的、音楽プロセス的、情緒的に良いな、とおもうもの、そして美しいものを選び出しました。

そしてそれを、こどもの心をとらえ、音楽のエッセンスを手渡し、遊べる、使えるように、日々工夫しながら、毎日のレッスンに生かしています。

私(谷中)は、音楽教室のレッスンでわらべうたを取り入れるようになって、20年以上経ちますが、いまだそのみずみずしいうたに自分自身も癒されながら、飽きることがありません。

ここでは、、ということで、「utena music field の音楽プロセス体験としてのわらべうた」について書いてみようと思います。音楽プロセス体験というのは、当音楽教室では必須の捉え方で、音楽を形からではなく、いわばエッセンスから捉えていく、ということになります。

わらべうたで感覚に働きかける

わらべうたはとても小さいものです。音数も少なく、あっという間に終わります。

私は、幼児期はたくさんの情報を処理する能力よりも、小さいものの動きな質感などといった解像度の方を大切に思っています。

できる、わかる、といったことはようするにアウトプットなのですが、
感じる、ということはインプットです。

このインプット、つまり器を育てるということが大事だと思っているので、最初からピアノの練習をさせるより、よく聞く耳を育てることの方を優先します。

子供時代の吸収力の素晴らしさは、誰もが知っているところですが、それは質にたいしてもそうで、案外みんな量の方ばかりに感心して終わっているように思います。それをすぐにアウトプットさせてしまうと、器は深くならないのではないかと思うのですね。そして、こどもというのは質の世界が本来の暮らしの場所でもあります。

何度も同じわらべうたに触れながら、共感し、模倣し、その世界に浸ることによって、その質の世界を堪能してもらうことが、将来、音楽というものの深さへとつながることは間違いないと思っています。そして、この時期だからこそ周りに左右されずその世界を行き来することができるのです。ですからわらべうたはそうした質のリアリティを掴む練習にもなっているのです。

強い、弱い、上下、緩い、

嬉しい、ちょっと怖い、悲しい、ヘンテコ、いろいろふれてみたいところ。

わらべうたは音楽プロセス的に優れている

音楽プロセス、というのはutena music field 独特の言い方です。このホームページのあちこちにこの言葉が出てきます。読者のみなさんにも馴染んでもらえたら嬉しいです。
当音楽教室では、歴史の中で音楽が生成され、さまざまな体感を巻き込みながら成長して行くプロセスと、ひとりの人が音楽に出会いインプット、アウトプットを繰り返しながら、音楽と共に成長して行くこととは必ず同じプロセスがある、という観点から、音楽教育を捉えています。

わらべうたはいわば、そのスタート地点からほどなくであう音楽です。

わらべうたは音楽が生まれたばかりのような姿をしていながら、基本的要素が備わっています。

音の上がり下がり。拍感。リズム。そして、必要最低限。これは理解と体験とが一致するための基本条件と音楽プロセス体験ではとらえています。

ペンタトニック、という音階があるのをご存知でしょうか?これは、半音を避けた5音でできた音階です。

わらべうたは、最初単純に2音だけで始まります。

たこたこあがれ(ラソラソラララ〜♪)みたいな感じですね。
そこから、12音階へ至るプロセスでは、この半音を避けたペンタトニックを経由します。

メロディにつかう音が増えていくプロセス

コダーイの音楽教育やシュタイナー教育でもペンタトニックを幼児期の音楽に取り入れていますが、これは、世界共通でもある音楽発生のプロセスに浮かび上がってくる音階だからです。

娘は幼い頃、半音が取れませんでした。そう、自然ペンタトニックで受け取っていたのです。それがやがて、しっかりと音程を取れるようになっていったのですが、それはまさに音楽が生まれて育っていくプロセスを見ているようでした。


ですから音楽の発生の順番から見ると、半音をつかったメロディというのはもっと後なのですね。ドから順番にできたわけでもありません。
ペンタトニックは音楽が生まれるプロセスの途中にあり、子供もまた音楽と仲良くなるプロセスにある、ということです。

ペンタトニックは、むしろその後半音や長調短調との出会いのリアリティを生むためにも、この時期に与えると滋養がある、というものだと思います。(大人でも、音楽を発生からのプロセスを追って学び直したい時には、ペンタトニック良いと思います。でもその時はまず2音から)

シュタイナー教育でもペンタトニックありき、となってしまうと、なんかそれは違うなあと思うけれども、その理論としてはまさに音楽プロセス体験だと思います。

これと同じようなことは、リズムに対しても起こっていて、単純シンプルながら、拍感とリズムがあり、時間軸の基本的要素を身体的に身につけていくには年齢的にも音楽の学び的にも程よいので、拍を取りながら歌うという、単純な遊びをたくさんやっています。

暮らしと音楽を結ぶ情緒的な豊かさ

わらべうたは身近な暮らしを題材としたものが多くあります。

青山土手から」は洗濯をするプロセスをオスティナート(繰り返し)によって再現しているものですし、「あめあめふるなよ」は、鳥に思いを馳せる歌詞になっています。

だれとだるまと」はちょっと覚悟を試すような歌で、目と目でおはなしするくすぐったいけど嬉しい曲です。

ねずみやきつね、ねこ、といった小動物も多いですね。

わらべうたは本来身近な暮らしの中のものを素材としてきました。

ただ、それは現代から見たら、もう既にそれを誰も知らない、というものもあります。

「するす」は石臼のことですが、もう誰もそれを使っているところを見たことがありません。

ほかにも川で洗濯するなど、わらべうたには昔の日本の風景が織り込まれていますが、子供たちはそれを知りません。でも、その情景や質感をできるだけ伝えます。そうした情景も暮らしの延長上にあったことを思い出しながら。

わらべうたは暮らしと音楽を情緒的に結んでくれます。
暮らしの質感を捉えられるということは「私がなになにする」能動的な私としての「自分が何者であるか」に触れられるということでもあると私は考えています。

当音楽教室でのとりくみかた

幼児さんの音楽レッスンの中、とくに年少さん、年中さんの頃はわらべうたが中心となっています。

テレビやyoutubeなどを見ていると、子供っぽく脚色していたり、太鼓やリズムマシンで子供の興味を惹きつけようとしているものが多く見受けられます。

でも、うちの音楽教室では、あまりそういうことはしません。音楽というのは多相的なものなので、その立体感を伝えるのが音楽教室での務めと思っているからです。

変に脚色をしてしまうと、繊細なそれが伝わらなくなります。

上に書いた様な、感覚的、音楽プロセス的、情緒的、そのバランスをたもちながら、子供が質感からそれをつかみ取れるようにしてあげたいと思っているのです。

また、私は、音楽発生のところからわらべうた、と思っているので、わらべうたと子供っぽいとはちっとも思っていません。

子どもたち本人も、テレビが考える「子供」のようなこどもっぽい存在でもないと思います。

わらべうたは美しい。暮らしもただ、暮らしというだけで美しい、なんの脚色もいらない。

だから、その美しさを子どもたちと共有したいものだと思っているのです。

youtube

当音楽教室でのわらべうたの取り組みはまだ数はすくないですがyoutubeで見ることができます。

youtube utenaの音楽室の再生リスト から、「てあそびうた わらべうた」を選んでクリックしてみてください。

下はその中のひとつ「青山土手から」です。

utenaおすすめのわらべうた

このホームページには、utena music field で馴染んでいるわらべうたを音声や動画とリンクさせながら紹介しています。

ブログカテゴリー「わらべうた」

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音楽プロセス体験についてもっと知りたい

音楽プロセス体験はわらべうただけではなく、描く音楽学習の方法など、「音楽プロセス」を実感しながら自分で育てていく方法として生まれました。
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まとめ

わらべうた、というのはいろんな取り組み方があると思います。

地域や国によってもいろいろですよね。

遊びの延長なのであまり堅苦しく考えるのは違うと思いますから、どうやってそこに音楽的エッセンスを入れ込んでいくか、というのは、もう、伝える側の「あそび」なのですね。

伝達遊び。

子どもたちがそこに乗ってきてくれたら、うれしい、というスタンスでやっているわけです。

子どもが音楽を取り込んでいくプロセスと、音楽の生まれてきたプロセスを並列させて進めていくのは、子どもに音楽を押しきせないためにも大事なことだとも思っています。

長文を読んでいただいてありがとうございました。

utena music field