2021.03.13 開催日誌

8小節のなかの宇宙・4月の東京発展プログラム

2018年4月21日この年3回目の一日集中コース(発展プログラム)を行いました。
その時の様子です。

発展プログラムの様子

今回の講座の内容

この講座はセオリーとダイヤログ、グループワークで4時間。
でも、いつも、あっという間だった、という感じ。足りないくらいです。
ここで出会った人たちの発見ややりとりが、私が仕込んだパン種を何倍にも発酵させふくらませてくれます。

そして、この場でそれぞれの体験として知識・意識・無意識に残ったものは、いつ、どこでどんな風に作用していくのでしょうか。
それは未知数。

今回も感じること、実感すること、対話すること、を大切にしながら、前半はutena drawing (音楽のプロセスと実感を結ぶ方法)の理論やグループワークも交え、古い宗教曲のたった8小節、一オクターブ8音でできた、でもよく整えられた美しいメロディ(シュッツという作曲家のもの)を4時間かけて紐解き、情報を引き出し、体験として重ねていく、という内容のもの。

風船をふくらませたり、参加者で共同して一つの動線を作ったり、と楽しみながら、少しづつ音楽と感覚の深い場所へ・・

進行と出会った出来事

写真は私が講座までに何度もアプローチして、どんな風につたえていったらいいのかをまとめた資料の一部。

実際にはこれを見るのではなく 、これがその、いわばパン種。
私が伝えたいこと。
この小さなメロディがいかに豊かな情報を含み、層をなし、余すところなく音楽であり、自然と人のいとなみの融合であるか。

それを、一人ひとりの体験として手渡していくためには、演奏だけでなく、ことばだけではなく、こうやってともに動線を描きながら、共有していく、という方法をここではとっていきます。

そして、受け取る人たちのそれぞれの、実感。


参加者と私とで並んで動線を描いていた時、発展プログラム2巡目の方がふっと気づいたことを口にしたことがきっかけで、その動きをあっという間に変えていくことになった、ということがあって、助けられる、というか、それは参加者も私もで、個人の体験の深まりが講座に・・というより人に・・伝播していく、時間の重なりを感じました。こんなシーンに出会えたことは私にも大きな歓びでした。

最後にまとめ的なアーティキュレーションのスケッチ。まとめ上げ、自分の芯に据えていくための実感は、音楽を書く要素に分けて体験するのとは別のもので、まずはその要素一つ一つが感覚を伴って捉えられ、その上で結び合わせる縦糸を見つけていくことが必要。それはすぐに育つものではないかもしれません。でも各要素がどんなふうに一つの音楽として創造されていくかのシュミレーションになれば良いな、と思って、私が描いているのをみてもらいました。これが正解とか、そういうのでもなくて、なぞってわかるものでもない、一人ひとりのなかで成熟し、結実していくものの手助けになっていけば良いと思います。

受講者のドローイング

下の写真郡は1人の参加者のスケッチブックから。
時間があったので、当日描いたものを全部写真に収めさせていただいて、あとから数えたら、26枚ありました。(下の12枚は抜粋です。)
音楽の要素とおおくの情報を聞き分けること、自分の体験と音楽を結びつけ実感につながること、他の参加者の体験の模倣、自分の内側が動いて、外にある音・音楽とつながっていくこと。
このドローイングには、音楽とその人との対話が描かれています。

これまでのこととこれからのこと

この講座をはじめた始めたころは、utena drawing という方法がどこへ向かっていくものなのかわからず、私自身の迷いもいろいろあり、不安定さも否めなかったのですが、模索しながらここまでやってきて、これから行き着く先というのも見えてきたという思いがあります。

なにを手渡して行けば良いのか。
どこまで手渡せば、受講者の一人ひとりのなかで結実していくのか、その答えはきっといつまでも見つからない 問いのままただただ深まって行くのでしょうが、それでも、受講者の方たちの表情や音楽の変化を感じるにつけ、確かに結実していっているものの、確かさが生まれてきている、と思える様になってきた、今回の東京講座でした。

東京では、初心者向けの「音楽を描く」講座や「実感してすすむ楽典講座」、個人レッスンもありました。


発展プログラムは、2021からオンライン中心でも受けることができるように工夫しています。